『成瀬は天下を取りにいく』はなぜ心を掴む?魅力を徹底解剖!【書評】

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『成瀬は天下を取りにいく』レビュー|読めばきっと、昨日より自分が好きになる。

更新日: 2023年10月27日

毎日同じことの繰り返しで、心が動く瞬間なんて最近あっただろうか?

「周りはどう思うか」「失敗したらどうしよう」…そんな見えない鎖に縛られて、本当にやりたいことを後回しにしていませんか? もし、あなたの心に少しでも思い当たる節があるなら、この物語を読むことが最適解になるかもしれません。

今回ご紹介するのは、宮島未奈さんのデビュー作にして2024年本屋大賞を受賞した話題作『成瀬は天下を取りにいく』。ただの青春小説だと侮ってはいけません。この本には、私たちの凝り固まった日常を鮮やかに塗り替え、忘れかけていた初期衝動を呼び覚ます、とてつもないエネルギーが詰まっています。

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🤔なぜ、この風変わりな女子高生の一挙手一投足が、私たちの「明日」を変えるのか?

『成瀬は天下を取りにいく』は、発売直後から口コミで火が付き、多くの読者の心を鷲掴みにしてきました。「元気をもらえた」「爽快な読後感」「成瀬が大好きになった」――その熱狂はとどまるところを知りません。

しかし、なぜでしょう? 主人公は、お世辞にも「普通」とは言えない、風変わりな女子高生。彼女の突拍子もない行動の数々が、なぜこれほどまでに私たちの心を揺さぶり、明日への一歩を踏み出す勇気を与えてくれるのでしょうか?

この記事では本作が持つ抗いがたい魅力の正体を、ネタバレに最大限配慮しながら解き明かしていきます。

📖夏、閉店する百貨店。ひとりの少女の突拍子もない宣言から、前代未聞の青春が幕を開ける

物語の舞台は、滋賀県大津市。コロナ禍の2020年夏、中学2年生の成瀬あかりは、幼馴染の島崎みゆきにこう宣言します。

「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」

間もなく44年の歴史に幕を下ろす「西武大津店」。その閉店までの日々を毎日見届け、ローカルテレビの中継に映り込む――それが成瀬の突拍子もない夏の目標でした。

M-1グランプリへの挑戦、丸坊主での実験、市民憲章の暗記と実践…。常に我が道を突き進む成瀬あかり。彼女の周囲の人々は、戸惑い、呆れ、時に反発しながらも、いつしかその唯一無二の引力に巻き込まれていきます。これは、どこにでもありそうで、どこにもなかった、最高に爽快で、ちょっぴり切ない青春の記録です。

📣「成瀬が大好き!」の声が止まらない。読了者たちの熱狂と爽やかな感動が示す、新時代のヒロイン誕生の瞬間

本作のレビューで最も多く見られるのが、主人公「成瀬あかり」への圧倒的な支持と愛情です。彼女の魅力とは一体何なのでしょうか。読了者たちの声を見てみましょう。

「成瀬のブレない姿勢に元気をもらえる一冊。読後感も爽やか。」

「成瀬の不思議な魅力に引き込まれ、どんどん読み進めてしまった。」

「他者の評価を気にせず自分のやりたいと思ったことをやってみよう!と素直に思える。」

多くの読者が、他人の目を一切気にせず、自らの好奇心と信念にのみ従って行動する成瀬の姿に、爽快感憧れを抱いています。それはまるで、私たちが心のどこかで「こうありたい」と願いながらも、実行できずにいる生き方を体現してくれているかのようです。彼女の存在そのものが、読者にとってのビタミン剤になっているのです。

💎【微ネタバレ注意】「規格外の主人公」「視点が織りなす友情」「日常に輝きをもたらす地元愛」。この物語が心を鷲掴みにする3つの理由

では、具体的に『成瀬は天下を取りにいく』の何が、これほどまでに私たちを惹きつけるのでしょうか。ここからは、分析によって明らかになった3つの要素を、ネタバレに配慮しつつ深掘りしていきます。

唯一無二の主人公「成瀬あかり」の突き抜けた魅力

本作の最大のエンジンは、間違いなく主人公・成瀬あかりのキャラクターです。彼女は天才的な頭脳と身体能力を持ちながら、そのエネルギーを「M-1出場」や「丸坊主」といった、常人には理解しがたい方向へと全力で注ぎ込みます。

レビューでは「無敵感」「最強キャラ」と評される一方、注目すべきは彼女の人間味あふれる側面です。

「強くて自由に突き進みながらも成瀬なりの葛藤や抜けている部分もあり、とにかく成瀬あかりが大好きになった。」

「最終話では成瀬本人が他者とのやりとりで生じる微妙な心情の揺れ動きが描かれていて、実は意外とナイーブな面もあるのか、というギャップにやられる。」

そう、成瀬は決して感情のないロボットではありません。孤高に見えながらも、大切な友人との関係に心を揺さぶられ、戸惑う。この「最強なのに、不器用」というギャップこそが、彼女を単なる「変人」で終わらせない、血の通った魅力的な人物として私たちの心に刻み込むのです。

周囲の視点で深まる物語と「友情」の尊さ

この物語の巧みな点は、主人公である成瀬自身の視点(一人称)ではほとんど語られないことです。物語は、幼馴染の島崎をはじめ、成瀬に反発する同級生や、偶然出会った他校の男子生徒など、彼女を取り巻く人々の視点で紡がれていきます。

この手法により、読者は「成瀬あかりとは一体何者なのか?」という謎を抱きながら、客観的に彼女の規格外の行動を追体験することになります。そして、その過程で浮かび上がってくるのが、成瀬と島崎の友情の形です。

「孤高の天才のムーブ、一般人の島崎は理解はできないが【成瀬となら】といった一歩勇気を踏み出していく感じがよい。」

「友人の島崎もいいキャラしててこの2人のコンビが最高で引き込まれていきます。」

破天荒な成瀬と、常識人の島崎。正反対に見える二人が、互いを尊重し、支え合う姿は、多くの読者の胸を熱くさせました。特に、物語終盤で描かれる二人の絆の強さは、爽やかな感動を呼び起こします。これは、ただの変人の物語ではなく、かけがえのない友情の物語でもあるのです。

日常を塗り替える「地元愛」と挑戦する勇気

「西武大津店」「ミシガンクルーズ」「膳所(ぜぜ)」。本作には、滋賀県大津市に実在する(した)場所や名称がふんだんに登場します。この徹底したローカリティが、物語に圧倒的なリアリティと温かみを与えています。

「滋賀に行ってみたいと思う作品だった。」

「ハートフル(地元愛)に溢れた主人公に憧れる」

見慣れた風景も、成瀬のフィルターを通せば、壮大な冒険の舞台に変わる。閉店していく百貨店は、彼女にとって「捧げる」べき聖地となる。この、日常を面白がる天才的な視点こそ、本作が放つもう一つの大きな魅力です。

  • 共感ポイント: 誰にでもある「地元の思い出の場所」へのノスタルジーを刺激する。
  • 発見ポイント: 自分の住む町も、視点を変えれば面白さに満ちているかもしれない、という気づきを与えてくれる。

「膳所から世界へ!」という作中の合言葉は、どんなに小さな場所からでも、自分の意志ひとつで世界は広がるという、力強いメッセージとして私たちの胸に響きます。この物語は、「挑戦することの楽しさ」を思い出させてくれる、最高の応援歌なのです。

🗺️この物語は、退屈な日常に潜む「宝の地図」になる

『成瀬は天下を取りにいく』を読み終えたとき、あなたはきっと、自分の周りの世界が少しだけ違って見えるはずです。

いつも通る道、寂れてしまった商店街、当たり前にそこにあると思っていた建物…。それらすべてが、何か面白いことの始まりになるかもしれない。成瀬の生き方は、私たちにそんな魔法のような視点を教えてくれます。

この物語は、人生という壮大な冒険のための、具体的な攻略法を教えてくれるわけではありません。しかし、あなたの足元に、面白さやワクワクが眠っている場所を示す「宝の地図」のような存在になってくれるはずです。

何か新しいことを始めたいけれど勇気が出ないとき。周りの評価が気になって、一歩が踏み出せないとき。ページをめくれば、きっと成瀬があなたの背中を力強く押してくれるでしょう。

✨「どうせ無理」と呟くのをやめて、心の声に耳を澄ませたい「あなた」へ

私たちは大人になるにつれて、たくさんの「できない理由」を探すのが上手になります。でも、心の奥底では、子どもの頃のように、ただ「やりたい」という気持ちだけで駆け出せた自分を懐かしく思っているのではないでしょうか。

『成瀬は天下を取りにいく』は、そんな私たちに「まだ遅くない」と語りかけてくれます。200歳まで生きると本気で信じている成瀬にとって、人生は始まったばかり。それは、私たちにとっても同じはずです。

もしあなたが、日々に少しでも息苦しさを感じているなら、ぜひ成瀬あかりに会ってみてください。彼女のまっすぐな瞳は、あなたの日常に爽やかな風を吹き込み、「自分の人生の主人公は、自分だ」という当たり前の、しかし何よりも大切な真実を思い出させてくれるはずです。

読後、あなたの口からこぼれる言葉は、きっとこうでしょう。

「よし、私も何かやってみよう!」


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